トイレの水を流すたびに、便器の水位がゆっくりと上がり、ヒヤッとする。あるいは、月に何度も、ラバーカップ(スッポン)のお世話になっている。そんな「詰まりやすいトイレ」に悩まされている方は、決して少なくありません。この、繰り返し起こる厄介な問題の背後には、単に「一度に流すトイレットペーパーの量が多すぎる」という、一時的な原因だけでなく、より根本的な、いくつかの構造的・習慣的な問題が隠れている可能性があります。その原因を正しく突き止めない限り、あなたのトイレは、いつ噴水のように溢れ出すかもしれない、時限爆弾のような存在であり続けるのです。トイレが詰まりやすくなる原因として、まず考えられるのが「排水管の問題」です。トイレの便器から、建物の外の下水管へと繋がる排水管の勾配が、設計上緩やかすぎる場合や、配管の途中で、木の根が侵入していたり、長年の使用で尿石や汚れが蓄積して、管の内部が狭くなっていたりすると、水の流れが悪くなり、詰まりやすくなります。次に、「トイレの節水性能」が、皮肉にも詰まりの原因となっているケースも少なくありません。近年のトイレは、非常に優れた節水性能を誇りますが、その分、一度に流れる水の量が、従来のトイレに比べて少なくなっています。そのため、少し多めのトイレットペーパーを流しただけで、それを押し流すだけの水量が足りず、詰まりを引き起こしてしまうことがあるのです。また、私たちが普段、何気なく行っている「習慣」も、大きな原因となり得ます。トイレットペーパー以外の、水に溶けにくいもの、例えば、ティッシュペーパーや、お掃除シート、ペットのトイレ砂、そして食べ残しや嘔吐物などを、安易に流していないでしょうか。これらは、排水管の中で水を吸って膨張したり、油分が固まったりして、深刻な詰まりの原因となります。さらに、意外な盲点となるのが「水圧の低下」です。トイレのタンクに水を供給する「止水栓」が、何かの拍子で少し閉まり気味になっていたり、あるいは地域全体の水圧が低下していたりすると、タンクに溜まる水の量が不足し、十分な洗浄力を発揮できなくなります。これらの原因を一つ一つ検証し、思い当たる節がないかを確認することが、詰まりやすいトイレとの、長い戦いに終止符を打つための、最も重要な第一歩となるのです。