それは、いつものように洗濯物を詰め込み、スタートボタンを押した、ごくありふれた平日の午後のことでした。これはトイレ排水管のつまりを修理した東山区に、いつもの軽快なモーター音と、水が注がれる心地よい音だけが響いていました。しかし、洗濯槽が本格的に回転を始めたその時、私の耳は、明らかにいつもとは違う異質な音を捉えたのです。「ガコン、ガコン…ゴゴゴ…」。まるで、洗濯機の中に石でも放り込んだかのような、鈍く、不規則な衝撃音。その音は、洗濯槽が回転するたびに繰り返し、静かなリビングに不気味に響き渡りました。 私は慌てて一時停止ボタンを押し、洗濯機の中を覗き込みました。しかし、そこにはタオルやシャツといった、ごく普通の洗濯物があるだけ。ポケットの中に硬貨や鍵を入れ忘れたわけでもありません。首を傾げながらも、再びスタートボタンを押すと、やはりあの不快な異音は鳴り止みませんでした。それは、長年我が家の家事を支えてくれた、働き者の洗濯機が発している、初めてのSOSサインでした。 春日部市の専門チームが水漏れ修理したのは最初に頭をよぎったのは、「故障か…」というシンプルな絶望感でした。洗濯機は、現代生活において、もはや代替のきかない必須のインフラです。これが壊れてしまえば、明日からの洗濯はどうすればいいのか。コインランドリー通いの日々が始まるのか。修理にはいくらかかるのか。あるいは、もう寿命で、買い替えなければならないのか。次から次へと湧き上がる不安に、私の心は重く沈んでいきました。 しかし、ただ悩んでいても仕方ありません。私はまず、取扱説明書を引っ張り出し、「故障かな?と思ったら」のページを必死で読み込みました。そこには、異音の原因としていくつかの可能性が挙げられていました。その中で、唯一自分で確認できそうな項目が、「洗濯機が水平に設置されているか」というものでした。洗濯機には、本体が傾いていないかを確認するための「水準器」が内蔵されています。見てみると、気泡はわずかに中心からずれていました。長年の振動で、少しずつ傾きが生じていたのかもしれません。私は、洗濯機の前側の脚(アジャスター)を回して高さを微調整し、気泡が円の中心にぴったりと収まるようにしました。 祈るような気持ちで、三度、スタートボタンを押します。しかし、無情にも「ガコン、ガコン…」という異音は、少しも小さくなることはありませんでした。もはや、素人の手で解決できる問題ではない。私はそう判断し、メーカーのサポートセンターに電話をかけることにしました。電話口で型番と症状を伝えると、オペレーターは丁寧な口調で、「おそらく、洗濯槽を支えている軸の部分か、モーターの部品に何らかの不具合が生じている可能性が考えられます。一度、サービスマンがお伺いして点検させていただく必要があります」と告げました。 数日後、約束の時間にやってきたサービスマンは、手慣れた様子で洗濯機の背面パネルを外し、内部の構造を点検し始めました。そして、ものの10分もしないうちに、原因を特定したのです。「これですね」と彼が指し示したのは、洗濯槽の底で回転を支えている、金属製の部品でした。その一部が摩耗し、僅かな亀裂が入っていたのです。これが原因で、洗濯槽が回転するたびに軸がぶれ、異音を発生させていたのでした。 「この部品の交換だけで直りますよ。まだ他の部分はしっかりしていますから、買い替えるのはもったいないです」その言葉は、高額な出費を覚悟していた私にとって、まさに天の助けでした。部品の交換作業は1時間ほどで終了し、費用も買い替えに比べれば遥かに安く済みました。作業後、試しに運転してみると、あれほど悩まされた異音は嘘のように消え去り、洗濯機はかつての静けさを取り戻していました。 この一件は、私に家電製品との付き合い方について、大切なことを教えてくれました。それは、普段と違う「音」に気づくことの重要性です。異音は、機械がその内部で起きている異常を、私たち人間に伝えようとしている、必死のメッセージなのです。その小さなサインを「まあ、まだ動くからいいか」と見過ごし、放置してしまうと、いずれは完全に動かなくなるという、致命的な故障につながりかねません。早期に異常を察知し、専門家の診断を仰ぐこと。それが、結果的に製品の寿命を延ばし、余計な出費を抑えるための、最も賢明な対処法なのだと。 静かになった洗濯機の運転音を聞きながら、私は、これからはもっと家の機械たちの「声」に耳を傾けようと、心に誓ったのでした。