その事件は、ある蒸し暑い夏の日の午後に、何の前触れもなく発生した。一宮市ではトイレつまりによって漏水した排水口を交換してリビングにまで漂ってくる、微かだが確実に存在する下水の臭い。私は鼻をクンクンさせながら、発生源をたどった。そして、たどり着いたのは、毎日ピカピカに磨き上げているはずの、我が家のトイレだった。信じがたい。昨日までは、爽やかな芳香剤の香りしかしていなかったはずなのに。これが、後に「我が家のトイレ下水臭事件」と呼ばれる、謎の悪臭との長い戦いの始まりだった。 私の最初の捜査は、「徹底的な清掃」から始まった。便器の内部はもちろん、縁の裏側、床、壁、換気扇のフィルターに至るまで、ありとあらゆる洗剤を駆使して磨き上げた。これで解決するはずだ。しかし、私の努力をあざ笑うかのように、臭いは微塵も消えなかった。台所トラブルからつまり専門チームが藤井寺は、換気のために窓を開けると、風に乗って臭いが拡散し、事態は悪化するばかり。これは、表面的な汚れが原因ではない。犯人はもっと奥深くに潜んでいる。私は捜査方針を切り替え、インターネットという名の巨大な捜査資料室にアクセスした。 浮かび上がった第一の容疑者は、「封水切れ」。便器に溜まった水が、下水管からの臭いを防ぐ蓋の役割を果たしているという。なるほど。早速、便器を覗き込むと、確かにいつもより少し水位が低い気がする。私はバケツに水を汲み、そっと便器に注ぎ足した。これでどうだ。しかし、数時間後、期待は無残にも裏切られた。臭いは依然として、そこに居座り続けている。第一容疑者は、シロだった。 次に疑ったのは、「排水管内部の汚れ」。長年の汚れがヘドロとなって蓄積し、悪臭を放っているのではないか。私はドラッグストアに走り、最も強力そうな液体パイプクリーナーを購入。説明書の指示通りに一本丸ごと投入し、数時間放置した。わずかに臭いが和らいだような気もしたが、それは一時的なものに過ぎず、翌朝には完全に元通りになっていた。犯人は、こんな小手先の化学兵器で倒せるようなヤワな相手ではないらしい。私の手札は、もう尽きかけていた。 万策尽きた私は、ついにプロの探偵、すなわち水道修理の専門業者に助けを求めることを決意した。電話で状況を説明すると、すぐに駆けつけてくれた職人さんは、私の必死の捜査記録(清掃とパイプクリーナーの投入)を聞くと、静かに頷き、手慣れた様子で調査を始めた。彼は便器の周りを念入りに観察し、床に顔を近づけて臭いを嗅ぎ、そして、おもむろに便器全体にぐっと力をかけた。すると、便器がほんのわずかに、ミシミシと音を立てて動いたのだ。「犯人は、こいつですね」。職人さんが指さしたのは、便器と床の設置面だった。 事件の真相は、こうだ。長年の使用によるわずかなガタツキで、便器と床下の排水管を密閉しているゴム状のパッキン(フランジパテ)に、目に見えないほどの隙間が生じていた。その隙間から、下水の臭いが漏れ出していたのだという。どんなに便器を磨いても、排水管を洗浄しても解決しなかったのは当然だった。犯人は、その二つの捜査網のちょうど中間に、巧妙に隠れていたのだ。職人さんは一度便器を取り外し、新しいパッキンに交換して、再びしっかりと固定してくれた。すると、あれほど私を悩ませていた悪臭は、嘘のように完全に消え去った。我が家に、ようやく平穏が戻った瞬間だった。この事件は私に教えてくれた。見えない場所で起きているトラブルのサインに耳を傾けること、そして、素人捜査の限界を知り、迷わずプロを頼ることの重要性を。
我が家のトイレミステリー突然の下水臭、犯人は誰だ