環境への配慮と、水道料金の節約という、大きなメリットを持つ「節水トイレ」。しかし、その一方で、「以前のトイレよりも、詰まりやすくなった」という悩みを抱える人が、実は少なくありません。最新の技術が、なぜこのような問題を引き起こしてしまうのでしょうか。その背景には、節水トイレが持つ、構造的な特性と、私たちの使い方との間に生じる、ミスマッチが存在します。従来のトイレは、一回の洗浄で、十三リットルから、多いものでは二十リットルもの大量の水を使って、排泄物やトイレットペーパーを、水の勢いと量で、力任せに押し流す「洗い出し式」が主流でした。しかし、近年の節水トイレは、一回の洗浄水量が、わずか四リットルから六リットル程度しかありません。この少ない水量で、確実な洗浄力を確保するために、水を渦のように回転させて、吸い込むように排出する「サイホン式」や、さらに強力な水流を生み出す「トルネード洗浄」といった、様々な工夫が凝らされています。この「少ない水量で、水の流れを工夫して流す」という仕組みこそが、節水トイレが詰まりやすくなる、最大の理由なのです。水量が少ないため、一度に大量のトイレットペーパーを流すと、それを完全に押し流すだけの「運搬能力」が、物理的に不足してしまうのです。また、排水管の勾配が緩やかだったり、配管が長かったりする、古い家屋に、最新の節水トイレを設置した場合、便器の中はきれいに流れても、その先の排水管の途中で、水量が足りずに、トイレットペーパーが停滞し、詰まりを引き起こしてしまう、というケースも少なくありません。では、この問題を、どのように解決すれば良いのでしょうか。最も効果的な対策は、やはり、私たちの「使い方」を、トイレの性能に合わせることです。具体的には、「トイレットペーパーを、一度に大量に流さない」という、基本的なルールを徹底すること。そして、洗浄の際は、必ず「大」レバーを使うようにし、洗浄力を最大限に引き出すことです。また、トイレットペーパーそのものを、より水に溶けやすい「節水トイレ対応」のものや、シングルタイプの製品に切り替えるのも、有効な対策の一つです。節水トイレは、決して欠陥品ではありません。その特性を正しく理解し、少しだけ使い方に配慮してあげること。それが、環境にも、お財布にも、そしてトイレの平和にも優しい、賢明な付き合い方と言えるでしょう。